SEO施策に取り組む際、多くの企業が「どの施策が自社に合っているのか」「本当に成果につながるのか」という判断に悩みます。
本事例は、ICTソリューションを提供するBtoB企業において、自然検索流入の伸び悩みを背景に実施したSEO施策の取り組みを整理したものです。
成果の数値だけを切り取るのではなく、施策前の課題認識、方針決定に至るまでの思考プロセス、実行時の工夫や制約条件までを含めて紹介しています。SEOを検討している企業担当者が、自社の状況と照らし合わせながら「同様の施策が適しているかどうか」を判断するための材料としてお読みいただくことを想定しています。
概要
本事例は、ICTソリューションを中心に自社パッケージ製品の開発・販売やシステムインテグレーションを行うBtoB企業(以下、匿名企業)において、自然検索流入の伸び悩みを背景に実施したSEO施策の取り組みをまとめたものです。
施策の主眼は、単に検索順位を上げることではなく、自社サービスに関心を持つ可能性の高い検索ユーザーとの接点を増やし、Webサイトを「情報提供の場」から「認知・検討フェーズを支える媒体」へと位置づけ直す点にありました。
本記事では、施策前に抱えていた課題、その要因整理、方針決定に至るまでの判断プロセス、具体的な施策内容、そして成果の捉え方までを時系列で整理しています。SEO施策を検討中の企業担当者が、自社の状況と照らし合わせながら「同様の取り組みが適しているかどうか」を判断できる材料となることを目的としています。
事例の概要
対象となるのは、法人向けにICTソリューションを提供する企業です。自社パッケージ製品の開発・販売に加え、クライアント企業向けのシステム開発やソフトウェアの評価・検証といった幅広い事業を展開しています。
SEO施策の主目的は、自然検索経由での流入拡大と、特定サービス領域における認知度向上でした。特に「名刺管理」関連のテーマにおいて、検索結果上での存在感が十分に確立できていない点が課題として認識されていました。
施策期間は約4カ月間で、競合・ニーズ調査から戦略設計、キーワード選定、記事構成、記事執筆までを一貫して支援しています。
企業の概要
当該企業は中堅規模に位置づけられ、複数の事業ラインを持つ一方で、Webマーケティング専任の担当者は限られた体制でした。Webサイトは主に製品・サービス情報を掲載する役割を担っており、これまで積極的な集客施策の中心には据えられていなかった状況です。
そのため、記事コンテンツの制作やSEO施策は断続的に行われていたものの、明確な方針やKPIを持って継続的に改善していく体制までは整っていませんでした。こうした背景も踏まえ、無理のない運用を前提とした施策設計が求められました。
施策前の課題
施策開始前、同社が最も強く感じていた課題は、自然検索による月間流入数が想定していた水準に達していない点でした。Webサイト自体は長年運用されており、製品ページや会社情報、導入事例など基本的な情報は一通り揃っていましたが、検索エンジン経由で新たなユーザーと接点を持てている実感は乏しかったといいます。
特に課題として認識されていたのが、「名刺管理」という自社サービスに関連するキーワードでの検索結果です。事業内容としては名刺管理に関連するソリューションを提供しているにもかかわらず、主要キーワードでは上位表示ができておらず、結果として検索ユーザーにサービスの存在を認知してもらう機会が限られていました。
この状態に至っていた背景には、いくつかの要因が重なっていたと考えられます。まず、これまでのコンテンツは自社視点で整理されたものが中心で、製品機能や強みを説明する内容が主軸となっていました。そのため、「名刺管理とは何か」「名刺交換後にどのような業務が発生するのか」といった、検索ユーザーが実務の中で直面する具体的な疑問やシーンに十分に応えきれていなかった可能性があります。
また、SEO施策としてのキーワード設計も、検索ボリュームの大きいビッグキーワードを意識したものに偏っており、競合が多い領域で埋もれてしまっている状況でした。検索順位が上がらないことで流入が伸びず、結果として改善のためのデータも十分に蓄積されない、という循環に陥っていた点も無視できません。
社内体制の面でも、専任担当者が限られていたことから、検索順位やクリック率の変動を継続的に確認し、仮説検証を繰り返す余裕がなかったという事情がありました。記事を追加すること自体は可能でも、「どのキーワードを狙うべきか」「どの内容をどう改善すべきか」といった判断が属人的になりやすく、結果として施策が点在してしまっていたと捉えられます。
こうした複合的な要因により、Webサイトは存在しているものの、自然検索からの集客という観点では十分に機能しきれていない状態が続いていました。この状況をどのように整理し、どこから手を付けるべきかを明確にすることが、次のステップとして求められていました。
課題分析と方針設計
施策を検討するにあたり、まず着手したのは、現状の課題を感覚的なものではなく、構造的に整理することでした。自然検索流入が伸びていないという事実自体は明確でしたが、その要因が「コンテンツ量の不足」なのか、「キーワード選定の問題」なのか、あるいは「検索ユーザーとのズレ」にあるのかを切り分ける必要がありました。そこで、既存コンテンツの内容や検索クエリ、競合サイトの傾向を確認しながら、どの段階で機会損失が起きているのかを一つずつ確認していきました。
分析の過程で浮かび上がったのは、検索ボリュームの大きい主要キーワードに対して、競合が非常に強い領域で正面から勝負していた点です。「名刺管理」といったビッグキーワードは、既に大手サービスや専門メディアが多く参入しており、ドメイン評価やコンテンツ量の面で短期間に追いつくのは現実的ではないと判断しました。一方で、検索クエリを細かく見ていくと、「名刺交換 複数」「名刺 交換 後 メール」など、より具体的な業務シーンを想定した検索が一定数存在していることが確認できました。
この段階で検討した施策案は大きく分けて二つありました。一つは、ビッグキーワードでの上位化を目指し、製品ページやサービスページを中心に情報を拡充していく方法です。もう一つは、ミドル〜ロングテールキーワードを軸に、業務上の悩みや行動に紐づいたコンテンツを積み重ねていく方法でした。前者は中長期的なブランド構築には有効と考えられましたが、競合環境や社内体制を踏まえると、成果が出るまでに相応の時間とリソースが必要になる点が懸念材料でした。
最終的に選択したのは、後者のミドル〜ロングテールキーワードを中心とした方針です。この判断の背景には、「検索ユーザーの具体的な課題に応えるコンテンツであれば、ドメイン規模に関わらず評価される余地がある」という考え方がありました。また、業務シーンを想定した記事であれば、単なる流入数の増加だけでなく、サービス理解の促進にもつながる可能性があると判断しています。
そのため、まずは競合調査とニーズ調査を通じて、どのような検索意図が存在しているのかを整理し、それを起点にキーワード選定と記事設計を行う、という方針を明確にしました。単発の記事制作で終わらせず、検索データをもとに改善を重ねていく前提で設計した点も、この段階で重視したポイントです。
実施施策
課題分析と方針設計を踏まえ、本施策では「検索ユーザーの具体的な業務シーンに即した情報提供を継続的に行うこと」を軸に据えました。単に記事本数を増やすのではなく、どのような検索意図に対して、どの順番で情報を届けるのかを整理したうえで、コンテンツ全体を設計しています。
また、施策は単発で完結するものではなく、検索順位やクリック率の変動を確認しながら改善を重ねる前提で進めました。キーワード選定、記事構成、執筆、公開後のデータ確認までを一連の流れとして捉え、各工程が連動するよう意識しています。
実施施策① ミドル〜ロングテールキーワードを軸としたキーワード設計
最初に取り組んだのは、狙うべきキーワードの再整理です。従来は「名刺管理」といった抽象度の高いキーワードを中心に検討されていましたが、本施策では検索ユーザーが実務の中で直面する具体的な行動や悩みに着目しました。
具体的には、「名刺交換 複数」「名刺 交換 後 メール」といったように、業務シーンが想像できるミドル〜ロングテールキーワードを洗い出しています。これらのキーワードは検索ボリューム自体は大きくないものの、検索意図が明確であるため、適切な内容を提供できれば評価されやすいと考えました。
この設計が必要だった理由は、競合環境と社内リソースの両面にあります。ビッグキーワードでの上位化には、相応のコンテンツ量や被リンク、時間が必要となります。一方で、ミドル〜ロングテール領域であれば、既存ドメインの評価を活かしつつ、比較的短期間で検索結果に反映される可能性があります。
実施時には、単語単位ではなく「どのような状況で検索されるのか」を重視し、検索結果に表示されている既存コンテンツの傾向も確認したうえで、無理のないキーワード群に絞り込みました。
実施施策② ターゲットシーンを想定した記事構成・コンテンツ設計
キーワードが決まった後は、それぞれの検索意図に対して、どのような情報をどの順序で伝えるべきかを整理しました。本施策では、単なる用語解説に留まらず、検索ユーザーが置かれている状況や前後の業務フローを想定した記事構成を採用しています。
例えば、「名刺交換後のメール」をテーマにした場合、すぐに例文を提示するのではなく、「なぜメールを送る必要があるのか」「送る際に注意すべき点は何か」といった背景情報から説明し、そのうえで具体例を提示する構成としました。
このような構成にした理由は、検索ユーザーの理解度や検討段階が必ずしも一様ではないためです。情報を断片的に提示するのではなく、実務に落とし込める形で整理することで、結果的に滞在時間やページ評価の向上につながると判断しました。
記事作成時には、各ターゲット層ごとに「どの部署の、どの立場の人が読むのか」を想定し、専門用語の使用や表現レベルも調整しています。
実施施策③ 記事制作と公開後のデータを前提とした改善サイクル
本施策では、合計45本の記事を制作しましたが、すべてを一度に公開するのではなく、一定のペースで公開しながらデータを確認する進め方を取りました。公開後は、検索順位やクリック率の変動を定期的に確認し、想定通りの反応が得られているかを検証しています。
想定より順位が伸びない記事については、タイトルや見出し構成、検索意図とのズレを見直し、必要に応じて内容を修正しました。
この改善サイクルを重視した背景には、「記事を作って終わり」にしないという考え方があります。検索結果の評価は固定的なものではなく、競合状況や検索ニーズの変化によっても影響を受けます。そのため、データをもとに新たなキーワードを追加したり、既存記事を起点に派生コンテンツを検討するなど、継続的な調整を前提とした運用を行いました。
結果として、単発の成果ではなく、全体としてトラフィックが積み上がっていく構造を作ることを目指しました。
成果
本施策の結果、自然検索経由のトラフィックには大きな変化が見られました。施策開始時点では、月間の自然検索流入は約110程度に留まっていましたが、コンテンツ公開と改善を重ねていく中で増加し、約4カ月後には41,584まで伸長しています。数値としては約378倍、流入数で見ると40,000以上の増加となりました。
ただし、この数値は特定の1記事によるものではなく、ミドル〜ロングテールキーワードを中心とした複数の記事が積み重なった結果として捉えています。個々の記事の流入は小さくても、全体としては安定したトラフィック基盤が形成されていった点が特徴です。
定量的な成果に加え、定性的な変化も確認されました。具体的には、検索クエリの内容がよりサービス理解に近いものへと変化し、「名刺管理」そのものだけでなく、業務フローや活用シーンに関連する検索からの流入が増えています。これにより、サイト内の回遊や、サービスページへの遷移も増加傾向にあることが確認されました。
また、社内においても「どのような記事が評価されやすいのか」という共通認識が形成され、今後のコンテンツ企画に活かせるデータが蓄積された点は、副次的な成果といえます。
一方で、これらの成果は短期間で急激に改善したというよりも、方針に沿った施策を一定期間継続した結果として表れたものです。検索順位や流入は外部環境の影響も受けやすいため、今後も同様の水準が維持されるとは限りません。そのため、本事例では成果を過度に一般化するのではなく、「どのような考え方と進め方が、こうした結果につながったのか」という点に注目していただくことが重要だと考えています。
成功要因
本施策が一定の成果につながった背景には、個々の施策内容そのものよりも、進め方や意思決定の考え方が影響していたと考えられます。特定のテクニックに依存するのではなく、自社の状況や制約条件を踏まえたうえで、現実的に実行可能な方針を選択した点が結果に結びつきました。
ここでは、再現性の観点から特に重要だと考えられる成功要因を整理します。
成功要因① 自社リソースと競合環境を踏まえた現実的な方針設定
最初の成功要因として挙げられるのは、自社のリソースと競合環境を冷静に捉えたうえで、無理のない方針を選択した点です。検索ボリュームの大きいキーワードでの上位化は魅力的に見える一方、競合の強さや社内体制を考慮すると、短期的に成果を出すのは難しいと判断されました。
そこで、検索ユーザーの具体的な行動や悩みに紐づくミドル〜ロングテールキーワードに注力することで、限られた工数でも成果が見込める領域に集中しています。このように、「理想」ではなく「実行可能性」を優先した判断が、施策を途中で止めることなく継続できた要因の一つといえます。
成功要因② データを前提とした意思決定と改善の継続
もう一つの要因は、記事公開後のデータを前提に意思決定を行っていた点です。あらかじめ完璧な設計を目指すのではなく、検索順位やクリック率といった指標を確認しながら、仮説と検証を繰り返す進め方を採用しました。
この姿勢により、想定と異なる結果が出た場合でも方向修正が可能となり、結果的に施策全体の精度を高めることにつながっています。また、データを共有しながら進めたことで、社内でも施策の意図や優先順位が理解されやすくなり、運用面での齟齬が生じにくかった点も成功要因として挙げられます。
クライアントの声
「これまでWebサイトは製品情報を掲載する場という認識が強く、SEOについても断片的な取り組みに留まっていました。今回の施策では、検索ユーザーがどのような業務上の悩みを持って検索しているのかを整理したうえで、どの領域から取り組むべきかを明確にしてもらえた点が印象に残っています。
特に、ビッグキーワードで無理に勝負するのではなく、自社の状況に合ったキーワード群を提案してもらえたことで、施策全体の見通しが立てやすくなりました。記事制作についても、単に本数を増やすのではなく、公開後のデータをもとに改善していく前提で進められたため、社内としても納得感を持って取り組むことができたと感じています。
短期間で数値が大きく変化した点だけでなく、今後どのようにコンテンツを育てていくべきかの考え方が共有できたことが、継続的な運用に向けた収穫だと捉えています。」
同じ施策が向いている企業・向いていない企業
本事例で紹介したSEO施策は、すべての企業にそのまま当てはまるものではありません。事業内容や社内体制、Webサイトに求める役割によって、適・不適は分かれると考えられます。ここでは、今回の取り組みを踏まえ、どのような企業に向いているか、また向いていないかの判断材料を整理します。
向いている企業
本施策が向いているのは、専門性のあるBtoBサービスを提供しており、検索ユーザーの業務上の悩みや具体的な利用シーンが明確に想定できる企業です。特に、ビッグキーワードでの上位化に課題を感じているものの、ミドル〜ロングテール領域には十分な情報提供余地がある場合、本施策の考え方は有効といえます。
また、短期間で派手な成果を求めるのではなく、一定期間かけてコンテンツを積み上げていくことを許容できる企業にも適しています。専任のWeb担当者がいない、あるいは限られた体制で運用している場合でも、方針を明確にしたうえで進めれば、現実的に取り組める点も特徴です。
向いていない企業
一方で、本施策が向いていないケースもあります。例えば、短期間で特定のビッグキーワードの上位表示を必須条件としている企業や、SEO以外の広告施策で十分な集客ができており、Webサイトに情報資産としての役割を求めていない場合です。
また、記事公開後のデータ確認や改善に工数を割けない体制では、本施策の効果を十分に活かしきれない可能性があります。コンテンツを継続的に育てていく前提に立てない場合や、検索ユーザーの視点よりも自社都合の情報発信を優先したい場合には、別の集客手法を検討した方が適していると考えられます。
まとめ
本記事では、自然検索流入が伸び悩んでいたBtoB企業において、ミドル〜ロングテールキーワードを軸に据えたSEO施策を実施した事例を紹介しました。競合環境や社内体制といった制約条件を踏まえ、無理のない方針を選択したことが、継続的なコンテンツ制作と改善につながったと考えられます。
重要なのは、特定の手法をそのまま模倣することではなく、自社の事業内容やリソースに照らして施策の考え方を応用できるかどうかです。SEO施策は短期的な成果だけで評価するものではなく、情報資産としてWebサイトを育てていく取り組みでもあります。本事例が、自社にとって最適な集客施策を検討する際の一助となれば幸いです。
自然検索からの集客を強化したいものの、「何から着手すべきか」「どのキーワードを狙うべきか」でお悩みの方は、当社のSEO支援サービスをご活用ください。貴社の事業特性やリソース状況を踏まえ、調査・設計から無理のない運用体制づくりまで伴走します。



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