ITコンサルやクラウド導入支援を行うBtoB企業|ブログと事例ページの役割整理による集客改善プロセス

SEO施策の事例は数多く紹介されていますが、「なぜその施策を選んだのか」「どのような前提条件があったのか」まで詳しく語られるケースは多くありません。成果だけを見ても、自社に当てはまるかどうかを判断するのは難しいものです。

本記事では、ITコンサルティングやクラウド導入支援を行うBtoB企業(A社)において実施したSEO施策について、施策前の課題認識、方針設計に至る判断プロセス、具体的な取り組み内容、成果の捉え方までを整理しています。

SEO施策を検討している企業担当者の方が、「同様の取り組みが自社に向いているのか」「どの部分は参考にできそうか」を冷静に判断するための材料として、本記事をご活用いただければ幸いです。

概要

本事例は、ITコンサルティングを中心に、クラウドサービス導入支援、システム・アプリ開発、海外製品の国内展開、メディア運営などを手がけるBtoB企業(以下、A社)において実施したSEO施策の取り組みをまとめたものです。

A社では以前からブログや事例ページを保有していたものの、自然検索経由での流入や問い合わせへの貢献度を十分に把握できておらず、「現状の施策が自社にとって適切なのか」を判断しにくい状態が続いていました。

事例の概要

対象となるA社は、法人向けにITコンサルティングやクラウドサービス導入支援を行う企業です。個別のシステム・アプリ開発だけでなく、海外製ITサービスの国内展開支援や、自社メディアの運営など、複数の事業を横断的に展開しています。

今回のSEO施策の主目的は、自然検索経由でのトラフィック増加と、サービス検討層との接点創出でした。特定の商材を強く売り込むのではなく、課題解決を検討している企業担当者に対し、判断材料となる情報を提供することを重視しています。

施策期間は2025年1月から10月までの約10カ月間で、競合調査・ニーズ調査から戦略設計、キーワード選定、記事構成、記事執筆(7本)、およびブログ・事例ページの導線改善までを支援範囲としました。

企業の概要

A社は中堅規模の企業で、複数事業を展開する一方、Webマーケティングに専任で携わる担当者は限られた体制でした。Webサイトは主にサービス紹介や実績掲載を目的として運用されており、SEOを起点とした集客や問い合わせ創出は、必ずしも明確な役割として定義されていませんでした。

ブログ記事の更新や事例ページの掲載は行われていたものの、どのコンテンツがどの検討段階のユーザーに向いているのか、また問い合わせにつながる導線が適切かどうかについては、十分に整理されていない状況だったと考えられます。

そのため、本施策では、限られた社内リソースでも継続可能であることを前提に、無理のない改善設計を行う必要がありました。

施策前の課題

施策開始前のA社では、「Webサイトからの問い合わせが思うように増えない」という漠然とした課題意識は共有されていたものの、その要因を具体的に分解・整理できていない状態でした。ブログ記事や事例ページは一定数存在していたものの、それらがどのような検索ニーズに対応しているのか、また検討段階のどこに位置づけられるコンテンツなのかが明確ではありませんでした。

テーマ選定が属人的

特にブログについては、更新自体は行われていたものの、テーマ選定が属人的になりやすく、「自社としてどの領域で認知を獲得したいのか」「どのような検索ユーザーに読まれることを想定しているのか」といった観点での整理が不足していました。

その結果、記事単体では一定の情報価値があるものの、サイト全体として見ると関連性や導線が弱く、問い合わせや商談につながる動線を十分に担えていないと考えられます。

事例ページが判断材料が読み取りにくい

また、事例ページについても、実績紹介としての役割は果たしていた一方で、「どのような課題を持つ企業に向けた事例なのか」「自社と似た状況の企業が参考にできるポイントはどこなのか」といった判断材料が読み取りにくい構成でした。そのため、閲覧されたとしても、検討を前進させる情報として十分に機能していなかった可能性があります。

明確なKPIや評価指標が設定されていない

運用面では、SEOに関する明確なKPIや評価指標が設定されておらず、アクセス数や問い合わせ数の増減についても、「増えている気はする」「減ってはいない」といった定性的な把握にとどまっていました。こうした状況では、施策の優先順位を判断しづらく、改善の意思決定が後手に回りやすくなります。

これらの背景から、A社の課題は単に「記事数が少ない」「順位が上がっていない」といった表面的な問題ではなく、Webサイト全体を通じて、検索ユーザーの検討プロセスとコンテンツの役割が整理されていない点にあると考えられました。

課題分析と方針設計

施策前の状況を踏まえ、まず着手したのは「何が課題なのか」を構造的に整理することでした。単純にアクセス数や順位だけを見るのではなく、検索ユーザーがどのような課題意識を持ち、どの段階でA社のWebサイトに接触しているのかを起点に、現状のコンテンツ配置を見直しています。

想定される検討フェーズを大きく三つに分ける

具体的には、ブログ記事と事例ページを軸に、想定される検討フェーズを大きく三つに分けました。情報収集段階、比較・検討段階、問い合わせ直前の判断段階です。この整理を行った結果、A社のWebサイトでは、情報収集段階向けの断片的な記事は存在する一方で、それらが比較・検討段階や判断段階へ自然につながる導線が弱いことが明らかになりました。

同業他社がどのようなテーマで情報発信を行っているかリサーチする

次に、競合調査とニーズ調査を通じて、同業他社がどのようなテーマで情報発信を行っているか、また検索結果上で評価されているコンテンツの傾向を確認しました。その過程で、競合の多くが「サービス紹介」と「SEO記事」を明確に分けて運用しているのに対し、A社では役割の線引きが曖昧である点が課題として浮かび上がりました。

方針の決定

検討段階では、複数の施策案が挙がりました。たとえば、短期間で記事本数を増やす施策や、広告施策と組み合わせた集客強化も選択肢として検討されています。しかし、社内体制や運用負荷を考慮すると、継続性に課題が残ると判断されました。そのため、今回は「既存ページの役割整理」と「問い合わせにつながる導線設計」を優先する方針が採用されています。

最終的な方針としては、①検索ニーズを踏まえたキーワード選定と記事構成の見直し、②ブログから事例ページへの自然な導線設計、③事例ページ自体の構成改善による判断材料の充実、の三点を軸に施策を進めることとしました。短期的な成果を狙うのではなく、検索ユーザーが検討を進めやすい状態を整えることを重視した判断と言えます。

実施施策

今回の施策では、単発のSEOテクニックを積み重ねるのではなく、「検索ユーザーが情報収集から検討、判断へと進む流れをWebサイト上でどう支えるか」という全体設計を重視しました。

そのため、記事制作だけを切り出して実施するのではなく、競合・ニーズ調査から戦略設計、キーワード選定、記事構成、執筆、さらに既存ページの導線改善までを一連の流れとして捉えています。

特に意識したのは、ブログコンテンツと事例ページをそれぞれ独立したものとして扱わないことです。ブログは検索ユーザーとの接点を広げる役割、事例ページは検討を具体化するための判断材料という位置づけを明確にし、両者が自然につながる構造を目指しました。

競合・ニーズ調査を起点とした戦略設計

最初に取り組んだのは、競合調査とニーズ調査を通じた全体戦略の整理です。A社の事業領域は幅広く、闇雲にテーマを広げると、記事が分散しやすいという懸念がありました。そのため、まずは検索結果上で競合となる企業やメディアを洗い出し、どのようなテーマで評価されているのかを確認しています。

この調査では、単に上位表示されているキーワードを見るだけでなく、「どのような課題文脈で情報が提供されているか」「どの段階の検討ユーザーを想定しているか」に着目しました。その結果、A社が強みを持つクラウド導入支援やITコンサルティング領域では、具体的な判断材料を提示できているコンテンツが相対的に少ないことが分かりました。

こうした調査結果を踏まえ、今回は「幅広く浅く情報を出す」のではなく、「A社の支援内容と親和性の高い課題テーマに絞り、検討に役立つ情報を深く提供する」という方針を採用しています。この段階で方向性を明確にしたことで、その後のキーワード選定や記事構成に一貫性を持たせることができました。

キーワード選定と記事構成の最適化

次に行ったのが、戦略方針に基づくキーワード選定と記事構成の設計です。検索ボリュームの大小だけで判断するのではなく、「検索意図が明確で、A社のサービス理解につながりやすいか」という観点を重視しました。

具体的には、課題認識フェーズにある検索ユーザーが調べそうなキーワードを起点に、そこから自然に「支援内容」や「事例」へと関心が移る流れを想定しています。そのうえで、各記事が単体で完結するのではなく、関連する事例ページや他の記事へ内部リンクでつながる構成を設計しました。

記事構成では、専門用語を必要以上に多用せず、ITに詳しくない担当者でも理解できるよう、背景説明や判断の考え方を丁寧に補足しています。結果として、7本の記事はそれぞれ独立しながらも、サイト全体として見た際に役割が重複しにくい設計となりました。

ブログ・事例ページの導線改善

三つ目の施策として、既存のブログページおよび事例ページの導線改善を行いました。これまでのページ構成では、記事を読んだ後に次の行動が分かりにくく、問い合わせや事例閲覧につながりにくい状態だったと考えられます。

そこで、ブログページにはサイドバーへのバナー追加、CTAの設置、更新日の明示など、SEOおよびCVの観点で必要な要素を整理し、ワイヤーフレームを用いて改善案を提示しました。また、事例ページについても、単なる実績紹介ではなく、「どのような課題を持つ企業に向けた事例か」が一目で分かる構成へと見直しています。

これらの改善は、即座に大きな成果を生むことを目的としたものではなく、検索ユーザーが検討を進めるうえで迷いにくい状態を作るための土台整備として位置づけています。コンテンツ制作と導線改善を並行して行った点が、本施策の特徴の一つと言えるでしょう。

成果

本施策の成果として、最も分かりやすい変化は自然検索経由のトラフィック増加でした。2025年1月から10月までの期間において、Webサイト全体のトラフィックは約509増加しており、特に新たに制作したブログ記事や、導線改善を行ったページからの流入が徐々に積み上がっていったと考えられます。

一方で、今回の取り組みでは、短期間での問い合わせ数の大幅な増加を主要なKPIとして設定していたわけではありません。そのため、「何件増えたか」といった単純な数値評価よりも、「どのような検索キーワードで流入が発生し、その後どのページが閲覧されているか」といった行動の変化を重視して成果を捉えています。

実際に、ブログ記事から事例ページへの遷移が確認できるようになり、コンテンツ同士が役割を果たし始めた兆しが見られました。

定性的な変化としては、社内でWebサイトの役割に対する認識が変わった点も挙げられます。従来は「情報を載せておく場所」という位置づけが強かったサイトが、「検討中の企業担当者に判断材料を提供する場」として捉えられるようになり、今後のコンテンツ企画や改善に関する議論がしやすくなったと考えられます。

なお、トラフィック増加の要因をすべて本施策の効果と断定することはできません。市場動向や外部要因の影響も考えられるため、成果については冷静に捉える必要があります。ただし、施策前と比べて、SEO施策を評価・改善するための土台が整った点は、本取り組みの重要な成果の一つと言えるでしょう。

成功要因

本施策が一定の成果につながった背景には、個々の施策内容そのものよりも、進め方や考え方におけるいくつかの要因があったと考えられます。短期的な数値改善を目的とせず、現状を整理したうえで無理のない方針を選択したことが、結果として継続性のある取り組みにつながりました。以下では、特に影響が大きかったと考えられる二つの観点について整理します。

課題整理を起点とした意思決定

施策開始時点で、「とにかく記事を増やす」「順位を上げる」といった目先の施策に走らず、まずは課題を構造的に整理した点が重要だったと考えられます。ブログや事例ページがどの検討段階のユーザーに向けたものなのかを整理したことで、施策の優先順位が明確になりました。

この整理により、実施する施策と見送る施策の線引きがしやすくなり、社内外での認識のズレも減少しています。結果として、限られたリソースの中でも、取り組むべきポイントに集中できる環境が整いました。SEO施策を「施策の集合体」としてではなく、「意思決定の連続」として捉えた点が、進行の安定性につながったと考えられます。

継続運用を前提とした体制設計

もう一つの要因は、継続運用を前提に施策を設計したことです。短期間で成果を出すことを優先すると、運用負荷が高くなり、結果的に施策が止まってしまうケースも少なくありません。A社では、専任担当者が限られている状況を踏まえ、無理なく続けられる範囲で施策内容を設計しました。

具体的には、記事本数を抑えつつも役割を明確にし、既存ページの改善を並行して行うことで、少ない工数でも効果を積み上げやすい形を目指しています。この考え方により、施策が一過性で終わらず、今後の改善にもつなげやすい土台が整ったと考えられます。

クライアントの声

これまでA社では、ブログ記事や事例ページを「とりあえず用意するもの」として捉えており、それぞれがどのような役割を持ち、どの段階の検討ユーザーに向けたものなのかを明確に意識できていませんでした。今回の取り組みを通じて、Webサイト全体を俯瞰しながら整理できたことで、コンテンツの位置づけが理解しやすくなったと感じています。

特に印象的だったのは、記事制作と同時に導線改善まで含めて検討できた点です。これまでは「記事を書いて終わり」になりがちでしたが、記事を読んだ後にどのページを見てもらいたいのか、どの情報が判断材料になるのかを考える視点が社内に共有されました。

また、短期的な成果を強く求められることなく、自社の体制や事業フェーズに合わせた進め方を提案してもらえた点も安心材料でした。SEO施策を継続的に取り組むための考え方が整理され、今後の運用イメージを描きやすくなったと感じています。

同じ施策が向いている企業・向いていない企業

本事例で取り組んだSEO施策は、すべての企業に当てはまる万能な方法ではありません。一方で、特定の条件に当てはまる企業にとっては、検討する価値のある進め方と言えます。ここでは、読者が自社の状況と照らし合わせて判断できるよう、「向いている企業」と「向いていない企業」の特徴を整理します。

向いている企業

本施策が向いているのは、Webサイトを単なる会社案内ではなく、検討中の企業担当者にとっての判断材料として活用したいと考えている企業です。特に、BtoB領域でサービス内容が比較検討されやすく、導入前に情報収集が行われる商材を扱っている場合、ブログや事例ページの役割整理は有効に機能しやすいと考えられます。

また、専任のWebマーケティング担当者がいない、もしくは少人数体制で運用している企業にも適しています。記事本数を闇雲に増やすのではなく、既存コンテンツの活用や導線改善を含めた設計であるため、限られたリソースでも継続しやすい点が特徴です。中長期的にSEO施策に取り組みたい企業にとって、現実的な選択肢の一つと言えるでしょう。

向いていない企業

一方で、短期間で問い合わせ数や売上を大きく伸ばすことを最優先したい企業には、本施策は向いていない可能性があります。SEOは成果が出るまでに一定の時間を要するため、即効性を重視する場合は、広告施策など他の手法を検討した方が適しているケースもあります。

また、Webサイト上で提供する情報量を最小限に抑えたい企業や、社内でコンテンツ制作・改善にほとんど工数を割けない場合も注意が必要です。本施策では、情報整理や改善を継続することが前提となるため、その点を負担に感じる場合は、期待する効果を得にくいと考えられます。

まとめ

本事例では、ITコンサルティングを中心としたBtoB企業において、SEO施策を「集客の手段」としてではなく、「検討中の企業担当者に判断材料を提供する仕組み」として再設計した取り組みを紹介しました。

施策の中心となったのは、競合・ニーズ調査を踏まえた方針整理、キーワードと記事構成の見直し、そしてブログと事例ページを連動させる導線改善です。いずれも単体で完結する施策ではなく、Webサイト全体の役割を整理したうえで積み重ねていくことを前提としています。

成果としては、自然検索トラフィックの増加といった定量的な変化に加え、社内でWebサイトの位置づけや改善方針を共有しやすくなった点が挙げられます。一方で、短期間で大きな成果を保証するものではなく、継続的な運用が前提となる点には注意が必要です。

SEO施策は、企業の体制や事業フェーズによって適した進め方が異なります。本記事が、自社にとってどのような施策が現実的かを見極める一助となれば幸いです。

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