本記事では、製造業分野で幅広い事業を展開するBtoB企業(以下、A社)において実施したSEO施策の取り組みを事例として紹介します。
本事例の特徴は、短期的な成果を強調するのではなく、「なぜその施策を選んだのか」「どのような制約条件のもとで進めたのか」といった判断プロセスまで含めて整理している点にあります。
A社では、Webサイトを保有していながらも、自然検索からの流入がほとんど発生していない状況が続いていました。一方で、社内にはWebマーケティング専任の体制がなく、リソースや運用負荷を考慮すると、一般的なSEO施策をそのまま適用することは現実的ではありませんでした。
そこで本施策では、事業内容と検索ニーズの重なりを丁寧に整理し、テーマを絞ったコンテンツ施策を軸に据える方針を採用しています。
本記事では、施策前に抱えていた課題、その背景にある構造、方針設計に至るまでの検討内容、具体的な実施施策、成果の捉え方までを時系列で解説します。
SEO施策を検討している企業担当者が、「この取り組みは自社に向いているのか」「どの部分が参考になりそうか」を冷静に判断するための材料となることを目的としています。
概要
本事例は、スチール家具や産業機械、建築関連設備などを中心に幅広い事業を展開する製造業企業(以下、A社)において実施したSEO施策の取り組みをまとめたものです。A社では従来、Webサイトを主に会社案内や製品情報の掲載用途として位置づけており、自然検索を起点とした集客や情報接点の創出については、十分に活用しきれていない状況が続いていました。
こうした背景のもと、本施策では単に検索順位を高めることを目的とするのではなく、A社の事業領域や強みと検索ユーザーの関心が交差するテーマを整理し、Webサイトを「検討初期の情報収集段階を支える媒体」として再定義することを重視しています。
本記事では、施策前にどのような課題認識があったのか、それをどのように整理し、どのような判断のもとで施策方針を決定したのかを中心に、実施内容と成果を時系列で整理しています。SEO施策を検討中の企業担当者が、自社の状況と照らし合わせながら、この取り組みが適しているかどうかを判断するための材料となることを目的としています。
事例の概要
本事例の対象となるA社は、スチール家具をはじめとする各種什器や産業機械、建築関連設備などの製造・販売を行うBtoB企業です。SEO施策の主な目的は、特定製品・ソリューション領域における自然検索からの流入を新たに創出し、これまで接点を持てていなかった潜在層への認知を広げることにありました。
施策期間は2024年3月から2025年5月までの約1年2カ月で、競合調査・ニーズ調査から戦略設計、キーワード選定、記事構成、記事執筆(全10本)までを一貫して支援しています。短期的な成果創出よりも、継続的に評価される基盤づくりを前提とした取り組みとなっています。
企業の概要
A社は、複数の事業領域を持つ中堅〜大手規模の製造業企業であり、長年にわたり法人向けの製品・サービスを提供してきました。
Webサイトは以前から存在していたものの、主な役割は企業情報や製品カタログの掲載にとどまっており、Webを起点とした集客やリード獲得は限定的でした。
社内にはWebマーケティング専任の担当者が配置されておらず、コンテンツ制作やSEOに関する知見・工数が十分に確保できない状況もありました。そのため、本施策では運用負荷を過度に高めず、既存体制でも継続可能な形でSEOに取り組める設計が求められていました。
施策前の課題
A社では、Webサイトを保有しているものの、自然検索からの流入がほぼ発生していない状態が続いていました。特定の製品名や企業名での指名検索を除くと、検索エンジン経由で新たなユーザーと接点を持つ機会は限られており、「Webサイトが存在しているものの、事業成長に直接寄与している実感が持てない」という認識が社内にありました。
こうした状況に対し、単純に「記事数が少ない」「SEO対策をしていない」といった表面的な要因だけでなく、なぜその状態に至っていたのかを整理する必要がありました。
まず大きな要因として、A社のWebサイトが「情報を整理して掲載する場」として設計されており、検索ユーザーの課題や検討プロセスを前提とした構成になっていなかった点が挙げられます。製品やサービスの説明は詳細に記載されている一方で、「どのような課題を持つ企業が、どの段階で検索するのか」という視点での情報設計が十分ではありませんでした。その結果、検索エンジン上で評価されやすいテーマや切り口が明確にならず、検索結果に表示されにくい状態が続いていたと考えられます。
また、SEO施策に関する社内の優先度が高くなかったことも、背景要因の一つでした。A社では営業活動や既存顧客対応が事業の中心であり、Webを起点とした新規接点の創出は補助的な位置づけにとどまっていました。そのため、SEOに関する取り組みは断続的になりやすく、明確なKPIや評価基準を設定しないまま、部分的な施策にとどまっていた状況です。
さらに、扱う製品・ソリューションの専門性が高いことも、施策設計を難しくしていました。産業機械や自動倉庫といった分野では、検索ユーザーの多くが具体的な導入検討段階に入る前に情報収集を行う傾向がありますが、当時のサイト構成では、そうした初期検討層に向けた情報が不足していました。その結果、検索ニーズは存在しているものの、それに応えるコンテンツが用意されていない状態が生まれていたといえます。
これらの要因が重なり、A社では「SEOに取り組む必要性は感じているが、何から着手すべきか判断できない」「成果が出るイメージを持ちにくい」といった課題意識が生まれていました。本施策は、こうした漠然とした課題感を整理し、現実的な一歩を踏み出すための取り組みとして位置づけられています。
課題分析と方針設計
施策方針を検討するにあたり、まず行ったのは「自然検索流入が発生していない」という結果そのものではなく、その背景構造を整理することでした。A社の事業内容や製品特性、既存のWebサイト構成を踏まえると、単純に記事数を増やすだけでは成果につながりにくいと判断しました。そこで、検索ユーザーの行動とA社の情報提供の間に生じているズレを可視化することから着手しています。
課題整理の過程では、検索ユーザーを大きく「課題探索段階」「比較・検討段階」「具体的導入検討段階」に分け、それぞれの段階でどのような検索が行われているかを洗い出しました。その結果、A社のWebサイトは製品紹介や仕様説明といった後半の検討段階に偏っており、初期段階で検索される概念的なキーワードや課題整理型の検索に対する受け皿がほとんど存在しないことが明らかになりました。
次に、競合調査とニーズ調査を通じて、同業他社がどのようなテーマで検索流入を獲得しているかを確認しました。調査の結果、競合企業の多くが「製品名」ではなく、「用途」「仕組み」「導入背景」といった切り口でコンテンツを展開しており、検索結果上で一定の評価を得ている傾向が見られました。一方で、情報の網羅性や専門性にばらつきがあり、必ずしも十分に整理された状態ではないケースも確認されています。
こうした調査結果を踏まえ、複数の施策案を検討しました。例えば、製品ページの全面改修や、ホワイトペーパーを中心としたリード獲得施策なども候補に挙がりましたが、当時の社内体制や運用負荷を考慮すると、短期間で実行・改善を繰り返すことが難しいと判断しました。そのため、本事例では「検索ニーズが明確で、かつA社の強みを活かしやすいテーマ」に絞ったコンテンツ施策を軸に据える方針を採用しています。
最終的な方針として定めたのは、特定領域にテーマを集中させたうえで、検索意図に沿った記事を段階的に積み上げていくという考え方です。具体的には、「自動倉庫」をはじめとする重点テーマについて、基礎理解から導入検討までをカバーする情報設計を行い、Webサイト内に一貫した情報群を形成することを目指しました。この方針により、限られた記事数でも検索エンジンから評価されやすく、かつ運用面でも無理のないSEO施策が可能になると判断しています。
実施施策
本施策では、単発の記事制作や一時的な順位向上を目的とするのではなく、特定テーマにおいて継続的に評価される情報群を構築することを重視しました。そのため、個々の施策を独立させるのではなく、「調査」「設計」「制作」が連動する形で進めています。
まずはA社の事業領域と検索ニーズが交差するテーマを明確にし、そのうえで検索ユーザーの検討段階に応じた情報を段階的に用意する設計としました。これにより、記事単体ではなく、サイト全体として一貫性のあるSEO施策になるよう意識しています。
実施施策① 競合・ニーズ調査を起点としたテーマ選定
最初に取り組んだのは、競合調査とニーズ調査を通じたテーマの絞り込みです。A社が扱う製品・ソリューションは幅広いため、闇雲にテーマを広げると情報が分散し、十分な評価を得られない可能性がありました。そこで、検索ボリュームの大小だけでなく、「検索意図の明確さ」と「A社の強みとの親和性」を軸に調査を進めています。
具体的には、競合サイトがどのような切り口で情報発信しているかを確認し、検索結果上で評価されているページの構成や内容を分析しました。そのうえで、情報が不足しているテーマや、表層的な解説にとどまっている領域を洗い出しています。
このプロセスを経て、重点テーマとして選定したのが「自動倉庫」関連の領域でした。導入を検討する企業が多い一方で、基礎理解から具体的な検討までを一貫して解説しているコンテンツが少なく、A社の知見を活かしやすいと判断したためです。
実施施策② 検索意図に基づいたキーワード設計と記事構成
テーマ選定後は、検索意図を軸としたキーワード設計と記事構成の整理を行いました。本施策では、単一キーワードでの上位表示を狙うのではなく、関連する検索意図を包含する構成を意識しています。
例えば「自動倉庫」というキーワード一つをとっても、「仕組みを知りたい」「導入メリットを比較したい」「導入時の注意点を把握したい」といった複数の検索意図が存在します。これらを個別の記事として分断するのではなく、役割を明確に分けたうえで相互に補完する構成としました。
記事構成では、専門用語の使用を最小限に抑えつつ、必要な場合には背景や前提を丁寧に補足しています。これにより、業界に詳しくない担当者でも理解しやすく、かつ検索エンジンからも評価されやすい内容になるよう配慮しました。
実施施策③ 戦略設計を踏まえた記事執筆と公開後の評価
記事執筆の段階では、事前に設計した戦略と構成を踏まえ、情報の正確性と網羅性のバランスを重視しました。単なる一般論のまとめにならないよう、A社が長年培ってきた製造業としての視点や、実務に即した考え方を自然な形で盛り込んでいます。
また、記事本数は10本に限定し、一つひとつの品質を担保する方針を採用しました。記事公開後は、検索順位や自然検索流入の変化を定期的に確認し、意図した検索ニーズと乖離がないかをチェックしています。
このように、調査・設計・執筆を一連の流れとして捉えることで、限られた記事数でもテーマ全体として評価されやすいSEO施策となるよう設計しました。
成果
本施策の結果、A社のWebサイトでは自然検索経由の流入が段階的に増加しました。施策開始時点では、実質的に自然検索トラフィックが発生していない状態でしたが、2024年3月から2025年5月までの約1年2カ月の期間で、自然検索からのアクセス数は2,343まで伸長しています。短期間で急激な増加を狙ったものではないため、時間をかけて評価が積み上がっていく形となりました。
特に重点テーマとして設定した「自動倉庫」関連のキーワードでは、検索結果で上位表示を獲得するページが現れ、該当キーワードで1位に表示される状態が確認されています。この成果は、単一の記事の評価というよりも、関連テーマを体系的に整理し、情報群として構築した点が影響していると考えられます。
定性的な変化としては、社内におけるWeb施策への見方が変わった点が挙げられます。これまでWebサイトは「情報を掲載する場」という認識が強かったものの、検索を起点に潜在層と接点を持てる可能性が可視化され、SEO施策の継続検討が前向きに行われるようになりました。また、営業活動や展示会といった他の施策とWebの役割をどう連携させるか、といった議論が生まれた点も一つの成果といえます。
一方で、本施策による成果はすべての製品・事業領域に波及したわけではありません。テーマを限定して取り組んだ結果であり、未対応の領域については今後の検討課題として残っています。そのため、今回の成果は「SEOに取り組む土台が形成された段階」と捉えるのが適切であり、継続的な改善によって初めて事業への影響が拡大していくものと整理しています。
成功要因
本施策が一定の成果につながった背景には、個々の施策内容そのものよりも、進め方や判断の仕方における工夫があったと考えられます。SEO施策は、手法だけを切り出して再現しようとしても、同じ結果が得られるとは限りません。
本事例では、A社の事業特性や社内体制を踏まえたうえで、無理のない形で意思決定を行い、継続できる範囲に施策を収めた点が重要でした。以下では、特に影響が大きかったと考えられる要因を整理します。
成功要因① 施策の優先順位を明確にした点
本施策では、取り組むテーマや施策の範囲をあらかじめ限定し、優先順位を明確に設定しました。A社のように事業領域が広い企業の場合、すべての分野を同時に強化しようとすると、工数や判断が分散しやすくなります。そこで、本事例では「検索ニーズが明確で、かつA社の強みを活かしやすい領域」に集中する判断を行いました。
この判断により、記事ごとの目的や役割が曖昧になることを防ぎ、少ない記事数でもテーマ全体として一貫性のある情報設計が可能になりました。結果として、検索エンジンからの評価が分散せず、段階的に積み上がっていったと考えられます。
成功要因② 社内体制を前提とした現実的な進め方
もう一つの要因は、理想論ではなく、当時の社内体制を前提に施策を設計した点です。A社にはWebマーケティング専任の担当者がいない状況であり、高頻度な更新や複雑な運用を前提とした施策は現実的ではありませんでした。
そのため、本施策では記事本数を10本に限定し、一つひとつの品質を担保する方針を採用しています。また、調査や設計の段階で判断軸を共有することで、関係者間の認識ズレを最小限に抑えました。こうした進め方が、途中で施策が頓挫することなく、一定期間継続できた要因になったといえます。
クライアントの声
今回の取り組みを通じて、SEO施策に対する社内の認識が変わったと感じています。これまでは、Webサイトは製品情報を掲載するための補助的なツールという位置づけであり、検索からの流入についても明確な期待を持てていませんでした。
しかし、テーマを絞ったうえで検索ニーズに沿った情報を整理していくことで、自然検索からのアクセスが徐々に増えていく様子を確認できました。短期間で大きな成果を出す施策ではないものの、積み重ねることで評価されていくという感覚を社内で共有できた点は、大きな収穫だったと考えています。
また、施策を進める過程で、記事ごとの目的や想定読者を事前に整理してもらえたことも印象に残っています。これにより、単に記事を制作するのではなく、「どのような検討段階の担当者に、何を伝えるのか」を意識しながら内容を確認することができました。
現時点では、すべての事業領域で成果が出ているわけではありませんが、今後どの分野にSEOを展開していくべきかを検討するための判断材料が得られた点は、今回の取り組みの価値だと感じています。
同じ施策が向いている企業・向いていない企業
本事例で取り上げたSEO施策は、すべての企業にそのまま当てはまるものではありません。施策の効果を正しく捉えるためには、自社の事業特性や体制と照らし合わせて検討することが重要です。以下では、本施策の進め方が比較的適している企業と、注意が必要な企業の特徴を整理します。
向いている企業
本施策が向いているのは、専門性の高い製品・ソリューションを扱っており、検索ユーザーの検討期間が比較的長い企業です。A社のように、導入前に情報収集や比較検討が行われる商材では、検索ニーズに沿った情報提供を行うことで、検討初期段階から接点を持ちやすくなります。
また、Webマーケティング専任の体制が十分でなく、大量の記事更新や複雑な運用が難しい企業にも適しています。テーマを絞り、少数の記事でも評価される設計とすることで、限られたリソースの中でも継続的にSEOに取り組むことが可能です。
さらに、短期的な成果よりも、中長期的にWebの役割を育てていきたいと考えている企業にとっては、施策の進め方そのものが参考になるといえます。
向いていない企業
一方で、短期間でのリード獲得や即効性の高い成果を求めている企業にとっては、本施策は適していない可能性があります。検索エンジンからの評価が積み上がるまでには一定の時間がかかるため、短期施策としての期待値は高くありません。
また、扱う商材の検討期間が極端に短く、検索ユーザーが十分な情報収集を行わないケースでは、コンテンツ施策の効果が限定的になることも考えられます。
そのため、広告施策や営業活動と組み合わせた全体設計を行わず、SEO単体で成果を完結させようとする場合には、別の施策を優先した方が適切なケースもあります。
まとめ
本事例では、自然検索からの流入がほとんど発生していなかった製造業企業A社において、テーマを絞ったSEO施策に取り組んだプロセスを紹介しました。重要だったのは、流入数や順位といった結果だけでなく、「なぜその方針を選んだのか」「どのような前提条件があったのか」を明確にしたうえで施策を進めた点にあります。
A社のように、事業領域が広く、かつWebマーケティング専任の体制が十分でない企業にとっては、すべてを網羅しようとするSEO施策は現実的ではありません。本事例では、検索ニーズが明確で、自社の強みを活かしやすいテーマに集中することで、限られた記事数でも評価される情報群を構築しました。その結果、自然検索トラフィックの増加や、特定キーワードでの上位表示といった成果につながっています。
一方で、本施策は即効性を重視した取り組みではなく、中長期的にWebの役割を育てていくことを前提としています。そのため、短期間での成果を求める企業や、SEO単体での効果を期待する場合には、適さないケースもあります。
本記事が、SEO施策を検討する企業担当者にとって、自社の状況を見つめ直し、取り組みの是非や進め方を判断する一助となれば幸いです。
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