本記事では、デザイナーズ文房具を企画・販売する企業(A社)におけるSEO施策の取り組みを詳しく紹介します。
広告依存型の集客構造から自然検索流入を安定的に獲得するため、サイト構造の整理、コンテンツ戦略の強化、外部リンクの適正化といった複数の施策を有機的に組み合わせました。施策前の課題、方針決定のプロセス、具体的な実施内容、そして成果までを整理し、SEO施策を検討する企業担当者が自社に適用可能か判断できる材料を提供することを目的としています。
概要
本事例は、デザイナーズ文房具の企画・販売を行う小売・EC事業者(以下、A社)において、広告依存型の集客構造から脱却し、自然検索流入を安定的に獲得することを目的として実施したSEO施策の取り組みをまとめたものです。
A社では、これまで自社ECサイトの集客を主に広告施策に依存しており、一定の売上規模は確保していたものの、広告費の増減がそのまま集客数や売上に影響する状態が続いていました。また、過去に外部のSEO支援を受けた経験はあったものの、十分な成果を実感できず、SEOそのものに対して慎重な見方が社内に残っていた点も特徴的でした。
本施策では、単に検索順位の改善を目指すのではなく、「A社の商品や世界観に関心を持つ可能性の高い検索ユーザーと、どのような文脈で接点を持つべきか」という観点から、サイト構造・コンテンツ・外部評価の見直しを段階的に進めています。
本記事では、施策に至った背景、課題認識、方針決定の考え方、具体的な実施内容、そして成果の捉え方までを整理し、同様の課題を抱える企業担当者が自社に適用可能かどうかを判断するための材料を提供することを目的としています。
事例の概要
A社は、オリジナルデザインのノートやペンシルを中心とした文房具の企画・販売を行う企業です。自社ECサイトを主軸に売上を伸ばす一方で、全国に複数の実店舗を展開し、オンライン・オフライン双方でブランド展開を行っています。
今回のSEO施策の主目的は、主要キーワードにおける検索結果での露出強化と、広告に依存しないオーガニックトラフィックの安定的な獲得でした。特に「デザイン文具」「筆記具の選び方」といった、商品購入の検討初期段階にあたる検索ニーズへの対応が重要なテーマとして設定されています。
施策期間はおよそ6カ月間で、初期の課題整理・戦略設計から、サイト構造の調整、コンテンツ企画・制作、外部リンクの整理までを段階的に支援しました。運用面では、社内担当者と連携しながら、継続的な改善を前提とした体制構築も同時に進めています。
企業の概要
A社は創業から10年程度が経過した中規模事業者で、企画・デザイン・販売までを自社で一貫して行う点が特徴です。Webサイトは主に自社商品の販売チャネルとして位置づけられており、ブランドの世界観やデザイン性を重視した構成が採用されていました。
一方で、Webマーケティング専任の担当者は限られており、SEOやコンテンツ施策については、必要に応じて外部パートナーの支援を受けながら進めてきた経緯があります。そのため、施策の優先順位や評価指標が明確でないまま運用されていた部分もあり、今回の取り組みでは、現実的な工数と体制を前提とした施策設計が求められました。
施策前の課題
A社のECサイトにおける最大の課題は、集客構造が広告施策に大きく依存していた点にありました。リスティング広告やSNS広告を中心に一定の流入は確保できていたものの、広告費を投下し続けなければ流入が維持できず、費用対効果の面で中長期的な不安を抱えていたといいます。特に、繁忙期や新商品の発売時には広告費が増加しやすく、売上は伸びる一方で利益率が圧迫される状況が続いていました。
自然検索からの流入については、商品名やブランド名といった指名検索に偏っており、「デザイン文具」「おしゃれなノート」といった一般的な検討キーワードでは、検索結果上で十分な存在感を示せていませんでした。そのため、新規顧客との接点が限定的になり、ブランドをまだ知らないユーザー層へのリーチが弱い状態にあったと考えられます。
また、過去にSEO支援会社を利用した経験があったものの、当時は施策の狙いや優先順位が十分に共有されないまま進行していた部分があり、社内では「SEOは成果が見えにくい」「何を改善しているのか分かりにくい」といった印象が残っていました。この経験から、SEO施策に対する期待値が下がり、積極的に取り組む判断が後回しになっていた側面も否定できません。
加えて、同業他社がオウンドメディアや特集コンテンツを通じて、文房具の選び方や利用シーンを積極的に発信していたことも、A社にとっては無視できない状況でした。商品力やデザイン性には自信がある一方で、検索結果上では競合コンテンツに埋もれやすく、結果として比較検討の土俵に上がりにくい構造になっていた点が、根本的な課題として認識されていました。
課題分析と方針設計
施策に着手するにあたり、まず重視したのは「なぜ自然検索からの流入が伸びていなかったのか」を構造的に整理することでした。A社のサイト自体はデザイン性が高く、商品ページの情報も一定水準で整備されていましたが、検索エンジンの評価という観点では、情報のまとまりや役割が分かりづらい構成になっていた点が課題として浮かび上がりました。
具体的には、商品ページが中心の構成となっており、購入検討の前段階にあたる「選び方」「使い方」「比較」といった情報が不足していました。その結果、検索ユーザーの多様な意図に対して受け皿となるページが少なく、指名検索以外のキーワードでは評価を得にくい状態だったと考えられます。
こうした状況を踏まえ、検討段階では大きく三つの施策案が挙げられました。一つ目は、既存の商品ページを中心に細かなSEO改善を積み重ねる方法です。二つ目は、外部施策を強化し、被リンクの量と質を短期的に改善するアプローチです。そして三つ目が、サイト構造を見直したうえで、検索ニーズに沿ったコンテンツを体系的に拡充する方針でした。
検討の結果、A社では三つ目の方針を軸に据える判断をしています。理由として、短期的な順位変動よりも、ブランド理解を深めながら中長期的に流入を積み上げるほうが、事業モデルや社内体制に適していると考えられたためです。また、外部リンク施策についても、量を増やすことを目的とするのではなく、過去に取得された質の低いリンクを整理し、サイト全体の評価を安定させる役割に限定しました。
最終的な方針としては、「検索ユーザーの検討プロセスに沿ったコンテンツ設計を行い、それを支える形でサイト構造と外部評価を整える」という考え方を採用しています。この方針により、施策の優先順位が明確になり、社内外の関係者間で共通認識を持ったうえで取り組みを進められる体制が整いました。
実施施策
本施策では、単発の改善や一時的な順位向上を目的とするのではなく、A社のECサイトが中長期的に検索エンジンから評価され続ける状態を目指しました。そのため、コンテンツ制作、サイト構造の整理、外部評価の調整をそれぞれ独立した施策として扱うのではなく、相互に影響し合う要素として設計しています。
特に重視したのは、「どの検索意図に対して、どのページが応えるのか」を明確にすることでした。これにより、検索エンジンにとって理解しやすい構造を作ると同時に、ユーザーにとっても情報を段階的に理解しやすい導線を構築することを狙っています。
施策全体の設計においては、まず既存サイトの評価を不安定にしている要因を取り除き、そのうえで新たな評価を積み上げていく流れを採用しました。具体的には、外部リンクの整理によって土台を整えた後、検索ニーズに基づいたコンテンツ群を新設し、継続的に改善・拡張していく段階的なアプローチを取っています。この順序を守ることで、施策同士が干渉し合うリスクを抑え、効果検証もしやすい状態を保つことができました。
実施施策① 外部リンクプロファイルの整理
最初に着手したのは、A社サイトに向けられている外部リンクの状況を把握し、検索評価に悪影響を及ぼす可能性のある要素を整理することでした。過去のSEO施策の影響もあり、意図せず低品質と判断されやすいリンクが一定数存在している可能性があったためです。
分析にあたっては、リンク元サイトの内容や更新状況、A社との関連性などを個別に確認し、機械的に判断するのではなく「現在のサイト評価にとってどのような意味を持つか」という視点で精査を行いました。その結果、明らかに関連性が薄く、今後の評価改善に寄与しないと考えられるリンクについては、段階的に否認の対象としています。
この施策で重視したのは、短期間で一気に否認を進めることではなく、検索エンジン側の評価変動を確認しながら慎重に進める点でした。急激な変化は、かえってサイト全体の評価を不安定にする可能性があるため、一定期間ごとに状況を確認し、必要に応じて対応範囲を調整しています。
外部リンクの整理は、それ自体で大きな成果を生む施策ではありませんが、その後に行うコンテンツ強化や構造改善の効果を正しく評価してもらうための土台作りとして重要な役割を果たしました。この段階でサイトの評価基盤を整えたことが、後続施策を進めやすくした要因の一つと考えられます。
実施施策② コンテンツディレクトリの新設
次に取り組んだのは、検索ユーザーの検討段階に応じた情報を体系的に提供するためのコンテンツディレクトリの新設です。A社の既存サイトは商品ページが中心であったため、「購入前に情報収集を行うユーザー」に向けた受け皿が不足していました。そこで、「筆記具の選び方」や「デザイン文具の活用アイデア」といったテーマを軸に、新たな情報発信領域を設ける方針を採用しています。
ディレクトリ設計にあたっては、単発の記事を増やすのではなく、関連テーマ同士が自然に内部リンクでつながる構造を意識しました。これにより、検索エンジンに対しては情報の網羅性と専門性を示しやすくなり、ユーザーにとっても関心に応じて読み進めやすい導線が形成されます。
また、A社の強みであるデザイン性やブランドの世界観を損なわないよう、コンテンツのトーンや切り口にも配慮しました。一般的な解説記事にとどまらず、実際の商品開発の背景や利用シーンを交えた構成とすることで、情報提供とブランド理解を同時に促すことを狙っています。
この施策により、従来は拾いきれていなかった幅広い検索ニーズへの対応が可能となり、商品ページだけでは評価されにくかったキーワード群に対しても、検索結果上での露出を徐々に高めていく基盤が整いました。
実施施策③ 継続的なコンテンツ制作と外部チャネル連携
最後に実施したのは、前段で設計したコンテンツディレクトリに対する継続的なコンテンツ制作と、SNSやメールニュースレターなど外部チャネルとの連携です。ディレクトリを新設しただけでは、検索エンジンやユーザーの評価は十分に高まりません。そこで、月単位で記事企画・制作を行い、ユーザーインタビューや実際の利用シーンを深掘りしたコンテンツを公開する体制を構築しました。
記事制作にあたっては、各コンテンツが単独で完結するのではなく、内部リンクや関連情報への導線を意識することで、ユーザーが複数記事を回遊しやすい設計としています。また、記事の品質と情報量を一定水準で担保するために、編集フローやチェック体制も整備しました。
さらに、SNSやメールニュースレターを活用し、作成したコンテンツを既存顧客や潜在顧客に適切に届ける仕組みを設計しました。これにより、サイト外での反応やブランド認知度向上も期待できる環境を整え、オウンドメディア施策の成果が社内外で可視化されるようにしています。
この施策は、A社の事業モデルやブランドイメージに即した形で情報を提供し続けることに重点を置いたため、SEO効果の持続性が高く、再現性のある施策として評価されています。サイト構造・外部リンク整理・コンテンツ制作の三点を有機的に組み合わせた点が、今回の施策全体の強みとなりました。
成果
施策の結果、A社の主要キーワードにおける検索順位は大きく向上しました。特に「デザイン文具」関連のキーワードで検索エンジン上位に表示されるようになり、これまで広告依存だった集客に自然検索からの流入が大幅に加わる状態を実現しています。自然検索経由のセッション数は前年比で180〜220%増加し、持続的な流入改善が確認されました。
また、オウンドメディアの公開コンテンツにより、ユーザーの関心に沿った情報提供が可能となったことで、サイト内での回遊率や滞在時間も改善傾向にあります。SNSやメールニュースレターとの連携施策も、記事の認知やブランド理解に寄与し、いいね・シェアといった反応も増加しました。
定量的成果だけでなく、社内の担当者からは「検索ユーザーの視点で情報が整理され、ユーザーが求める内容に応じてサイトを改善できた」という評価も得られています。なお、順位や流入数の変化には季節性や広告施策の影響もあるため、過度に成果を断定するのではなく、あくまで施策の効果を示す指標として捉えることが重要です。
成功要因
本施策が安定した成果を得られた背景には、単なるSEOテクニックの実施にとどまらず、施策の趣旨や目的をクライアント側が理解し、積極的に協力した点が大きく影響しています。外部リンク整理やコンテンツ制作といった複数の施策を有機的に組み合わせることで、検索エンジンにとっても評価しやすく、ユーザーにとっても情報が整理されたサイト構造を構築できました。
また、施策の順序や優先順位を適切に管理したことで、各施策の効果を正しく評価し、次の施策に反映させるPDCAサイクルが機能しました。単発の改善に留まらず、長期的に持続可能な成果を生む設計ができたことも成功の要因といえます。
成功要因① クライアントの協力体制
A社の担当者が、施策の目的や効果の意図を正しく理解し、積極的に情報提供や記事制作への協力を行ったことは、施策の実行性を高める上で非常に重要でした。商品背景や利用シーンに関する情報提供、社内のデザインやマーケティングチームとの連携により、コンテンツ制作の精度と速度が向上し、検索ユーザーにとって価値ある情報を提供できました。
加えて、施策の進行状況や成果を定期的に共有することで、双方が現状認識を一致させたまま改善を継続でき、施策の優先順位や追加対応の判断もスムーズに行えたことが、成功要因の一つです。
成功要因② 施策設計と進行管理の適切さ
各施策を段階的かつ有機的に組み合わせた進行管理が、成果を安定させる要因となりました。外部リンクの整理で評価基盤を整えた後、コンテンツディレクトリの新設と継続的な記事制作を行う順序を守ることで、検索エンジンからの評価が正しく反映されやすくなりました。
また、施策ごとの効果を定量・定性両面で確認しながらPDCAを回す仕組みを構築したことで、改善の優先度や内容を的確に判断でき、短期的な変動に左右されず中長期的な成果につなげることができました。
クライアントの声
A社の担当者からは、「施策の目的や意図が明確に共有されていたため、社内でも納得感を持って協力できた」「これまで見えづらかった自然検索からの流入が可視化され、施策の効果を実感できた」といった声が挙がっています。
特に、コンテンツ制作や記事公開のスケジュール調整、商品背景の提供など、社内リソースを効率的に活用できた点が高く評価されています。
また、「サイト全体の情報構造やコンテンツが整理され、ユーザーにとって分かりやすい導線になった」との判断もあり、単なる順位向上だけでなく、ブランド理解やユーザー体験の向上にも寄与したことが伺えます。このフィードバックは、同様の課題を抱える企業が施策の適用可否を判断する上で参考になる内容です。
同じ施策が向いている企業・向いていない企業
本施策は、単に検索順位を上げるだけでなく、サイト構造の整理やコンテンツ戦略を組み合わせ、長期的な自然流入を安定的に獲得することを目的としています。そのため、施策の適用を検討する企業は、自社のリソースや運用体制、コンテンツ制作の方針との親和性を考慮する必要があります。以下に、向いている企業・向いていない企業の具体例を整理しました。
向いている企業
自社商品やサービスの特徴を明確に持ち、ユーザーの関心に沿った情報を提供できる企業は本施策に適しています。特に、Webサイトが情報発信や販売チャネルの中心であり、一定のコンテンツ制作リソースを社内に確保できる場合、段階的かつ有機的な施策設計が効果を発揮しやすいです。また、過去にSEO施策を断続的に行っていたものの、継続的な成果が出ていない企業や、競合他社がコンテンツ戦略を強化しており、検索ユーザーとの接点を増やす必要がある企業にも向いています。
まとめ
今回の事例では、単なる検索順位向上に留まらず、ユーザーの検討プロセスを意識したコンテンツ設計と、外部リンク整理による評価基盤の安定化を組み合わせることで、自然検索流入の持続的な改善を実現しました。
施策を通じて得られた知見やプロセスは、同様の課題を抱える企業にとって有益な参考例となります。SEO施策を検討する際には、今回の方針や進め方を自社の体制や目的と照らし合わせ、適用可能かどうかを慎重に判断することが重要です。



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